英語学習のヒント」カテゴリーアーカイブ

仕事の英語がもう少しできたらいいのに、という方に

「仕事でもう少し英語ができたほうがいいと思って、スクールを150分週2回に増やしたんですが、どうも…」
―レッスンとレッスンの間の自習は…?
「いえ…忙しくてとてもとても。」
―じゃあ、英語を話すとき頭の中で英作文してるでしょ。
「はい。」

それだと半永久的に今のレベルでしょうね。目的が読む、書く、話すのどれであれ、まず「頭の中で英作文」レベルを脱しましょう。

そのためには「英語の耳」をつくること。

「耳ができている」とは英語という音楽のリズム、ビート、メロディーラインを獲得していること。これを抜かして話す練習をしても聴き手に負担をかける品性の劣る話し方になるばかりです。

耳をつくるためには3か月くらいのうちに100時間、ネイティブが自然に話している音声を聴くこと。週末を抜かして平日190分くらいでしょうか。

このシリーズ、価格の10倍の価値を認めます!

おすすめは朝日出版の100万語聴破シリーズ。たった1300円足らずで自然な語りの音声(音読=文字読み上げ、ではない)、対訳テキストがついています。英語と米語は音楽的には別の言語ですから、どちらか決めるといいですよ。私はイギリスのRP(標準発音)を選んでいます。その理由は次稿にて。

「耳ができた」しるしは

  • はじめて読む文章でも頭の中のネイティブさんが読み上げてくれる。
  • 息遣いから文の長さの予測がつく。
  • 語り手の感情が感じられる。

日本語でのコミュニケーションでは自然にやっていることですね。昔、留学した人が「しばらくすると急に聞こえるようになった」と言っていた、あの感覚です。今は留学しなくても十分できます。こうなると楽です。というよりこの感覚なしで学ぶほうがよほど無理です。相変わらずあちこちでやっていますけどね。

この状態で脳トポグラフィーを撮ると、言語野に英語担当の中枢を分化しています。因果関係か相関関係かは不明です。ただ、言えるのは「人間は異質なものを受け入れることで仕事効率が上がる」ということです。だって、それまで言語中枢全体で日本語を処理していたのに、半分ずつ日本語、英語にわかれても難なく同じかそれ以上の処理ができるのですから。

気をつけるのは、同時に文字を読まないこと。内容が気になるなら事前に読んでおいてください。現代人は目ばかり頼りにする傾向があるので、耳が負けてしまいます。

今までのレッスンではひと月400分、3か月で20時間。これではいつまでも感覚は変わらないと思いますよ。

自分と向き合って、毎日少しずつ積み重ねたことだけが身につく。レッスンは発表の場として利用しましょう。

楽器のレッスンを考えてみて。うまくならないからって家で練習せずに先生のところに通う回数を増やしますか?それを歓迎する先生はなかなか腹黒ですなあ。さて、英語の世界はどうでしょう。

なに?!自習はやっぱり無理?通勤やお風呂の時間を使いたくない?

じゃあ、話せるようになるためにお金と時間を両方使うより、プロの通翻訳者にお金だけ使って時間を買い戻すことをおすすめします。餅は餅屋。いまはみんなが英語餅屋になろうとしてる。正直、もったいないと思ってます。

【お知らせ】
それでもやりたいという方に、上のセオリーを実践するシステムをまもなくご案内いたします。お知らせご希望の方はこちらからどうぞ。来年春にはイギリスのストーリーテリングフェスティバルに一緒に参加しましょうよ。

 

私が日常英会話を教えない理由-パン屑欲しけりゃパンを焼け

「冠木さんみたいに英語を話せるようになりたい!日常英会話教えて!」

ごめんなさい。お断りしています。「日常英会話」を練習しても決して私のようにはなりません。

パンくず皆さんが「日常英会話」とお呼びになる部分はパン屑みたいなもの。小麦と、水と、イーストと、バターをそろえて、生地をこねて、ねかせて、焼いたパンがあってはじめて、屑が出る。

屑は作ろうとして作るものじゃない。パンを作ろうとしたときに屑がおのずとできる。

NHKの「鶴瓶の家族に乾杯!」を思い浮かべてください。あれこそ香ばしいパン屑の山です。決して政治や経済の議論は出てこない。おばあちゃんの手料理や、おじいちゃんが50年漁師やってたとか、高校生が仲間とおやつ食べながら中間テストの勉強するとか…日常会話そのもの。でもその不可測さは無限。いわゆる場面別日本語会話フレーズ集ではとても対応できない。よほど回転の速いユーモアセンスのある人なら、まるで別の場面のフレーズを応用して破天荒な会話ができるかもしれないけれど。

場面別フレーズを覚えるのが悪いというわけではありません。それは必要条件であって、十分条件ではありません。そこで満足していると使える英語に自分が使われる。

じゃあどうする?

ひとつのストーリーを、頭を映画館にしながらまるまる自分のものにすることです。とはいっても多くの方は「どうやって?」と思われることでしょう。放っておいてもひとりで物語スイスイ覚えるなんて変人、物好き、偏執狂 just like me。

そこでイギリスのストーリーテラー、ニックとエミリーの語りをもとに、自然に自分と向き合える仕組みを作りました。まもなくご案内します。

気がついたら英語ストーリーテラーになれていますよ。一緒にイギリスのストーリーテリングフェスティバルに行きましょう!きっと日常英会話なんて自転車に乗るみたいに自動化されているはずですよ。

お知らせご希望の方は以下のフォームにご記入ください。準備整い次第ご案内さしあげます。

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theが「ザ」や「ジ」になる理由

「theの発音が変わる理由がわかりません」

ありがとうございます!こういうの大好き。理由があることを前提にしていらっしゃる。「ある」を前提にすると調べたい、知りたいという気になるものです。

日本でも律儀に使い分けています(笑)。
「ジ・アトリウム舞浜」
「ジ・アーバネックス芦屋」
「ザ・ドリフターズ」
「ザ・ピーナッツ」

なんでしょうね…実は場所はジで芸能人はザ?…そりゃいいですね。

学校では「ザを後ろが母音のときはジに変える」と習ったけれど…でも、これだと「なぜ」を説明しにくい。なんだかしっくりこない。

考え方がさかさまだからです。

aanのときもそうでしたね。aにわざわざnをつけるのではなく、anからnが落ちたものと残ったものがあった。後ろが母音だと落ちずに残った。後ろが母音だと古い形が残りやすい、といえます。

先に結論を言いますと、今回もそうです。後ろの単語が母音始まりのほうが方が前にいるtheも昔からの発音が残ってのんびりできました。後ろに子音が控えているとさっさとおしまい!になるのです。

ここでくせものがカタカナ表記。ザ、ジと書くとア段とイ段の違いだけで同格な母音を持っていると思うでしょう?わけもなく段を行き来しているようでしょう?でも英語では、ジ[i:]が天ぷらだとしたらザについている[ə]なんて天かすみたいなもの。

せめて「ジー・アトリウム」と書いてほしいもんです。書かないか。

ときどき次の語頭が子音でものんびりジーという人がいますが、間違いというより先祖返りです。

お急ぎの方はここまで。ここからは今の話をアカデミックにおさらい。


大切なのは時間の中での言語の変化を知り、楽器としての身体をベースに観察することです。後者が独りよがりにならないためには、耳ができていること。

さて、現在のtheのご先祖様はse, seo, þæt。いっぱいいますね。昔、英語の名詞は男性・女性・中性と分かれていたので冠詞もそれぞれに(上の順どおり)あったのです。þaは複数形。

オクスフォード大のオンライン語源辞典(画像をクリックすると辞典に飛べます)

「なぜ」と思ったときの強い味方です。

この冠詞の発音、前述のとおり今のtheよりずっと母音をしっかり発音していました。無理やりカタカナにするとseセ~, seoセーオ, þæt セア~ット(thatのテンテン無し版)。発音が聴ける面白い動画をご紹介します。

英語が苦手だという方のお話を伺ってみると、英語そのものが嫌いではなくて勉強がつまらなかったということがしばしばです。学校で「理由はない。そういうものだからまず覚えろ」と言われて何かがぷつりと切れてしまった、あとは仕方なく最低限でやってきた、と口を揃えます。 (Progress in Englishシリーズは中3で英語史がちゃんと出てきますから「なぜ?なぜ?」と問いまくれる。)

先生がご存知なかったとしても「自分たちで調べてごらん。発表の機会をつくるから」でよいではないですか。半端な物知りよりよほどよいです、自戒をこめて。

さて、大人にふさわしいを品格ある英語が身につく会員制教材、まもなく発表します。通訳道場★横浜CATSでも活用してる最強の学習ツールとセットです。会員限定国内外イベントもお楽しみに。ご関心おありの方はこちらからご連絡先をお知らせください。ご案内さしあげます。

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「英語はスペリングと発音が違いすぎます!」そうかな?

「英語ってなんでスペリングと発音が違いすぎます!」

―あー、中高生も必ずそれ言うけれど、あなたもそう思うのね。たとえば?

「こんなの見つけました。 “A rough-coated, dough-faced, thoughtful ploughman strode through the streets of Scarborough; after falling into a slough, he coughed and hiccoughed.” ghの発音、いろいろありすぎです!発音どころかthrouGHなんて黙り込んじゃってお化けです。」

―お化け、いいねえ。イギリスはお化けだらけ。

実はね、みんなが思う以上に実はスペリングの通りに読んでいるんじゃないか、と思ってる。アメリカではCoke “Lite”って普通でしょ?でもイギリスでは眉を顰める人が何人もいてね。アメリカ式が嫌いというわけじゃないの。何となく気持ち悪いんだって。

で、ウェールズの友人とウェールズ語のこと色々話していたときにヒント発見。あ、ウェールズ語はね、一見つづりが奇天烈だけれど古い言語の特徴が残っていて、子音にも母音のやわらかさが残っている言語。で、ウェールズ語の「ありがとう」は”diolch”ディオッホみたいな音。

ウェールズ、スノードニアにて、2011年

私が「あら、Lはどこいっちゃったの?発音しないの?」と尋ねると、友人はなぜか天井をにらんで何度かdiolch, diolch, diolchと繰り返し…「ちゃんと言ってるわよ」と。

耳を澄ますと…あ!言ってる。音にはなっていないけれど息で言っている!声になる前に消えてしまっているけれど、確かに息で言っている。

そう思ってlightを聴いてみると…ghのタイミングで確かに息のかけらが聞こえる!息だけでghをひっかけてるような。liteだと、iのところはべたっと母音のみ。日本人発音によくあるけど、なんだか「らしくない」。

そうやって息に耳をすませてみるとbeautiful だってbūtifulとは違ってる。

そんなこと辞書に書いてない?そりゃ無理もない。あれは発「音」記号なので「息」は書いていない。でも人の声には「音と息」がある。

息なんか聞こえない?

確かにいきなりでは無理。でも慣れれば聞こえてくる。自分でも言えるようになる。自然になる。

同じヴァイオリンの曲を聴いても、弓の返しが聴いてわかるひとと、そうでないひとがいる。ひたすら聴いて、自分でもひたすら弾くと、弓の返しが呼吸のように聞こえてくる。

ひたすら聴き、ひたすら弾けばいい。

あなたの英語も同じこと。自分で夢中になれる題材を選んでやってみたら。

このコの響きを聞いたとき、私だ!と感じました。

ふと気になるのが日本語の音。平安時代から表記と発音はずれていた、と聞いたことがあるけれど、どうやって調べたのかしら。

「たまふ」と「たもう」は口、息のしぐさが違うのでは。(おお、英語でもautumnってある。)

わかりやすさを優先するあまり、もともとあったものがないことにされているのでは…
面倒くさがって昔の音質よくないCDみたいなものを歓迎しているのでは…
それが私たちの言葉への感覚、耳と頭をなまらせているのでは…

お化けと一緒にちょっと心配してる。

 

 

 

 

 

「一度は通訳に憧れたけれど…」諦めるのはまだ早い

「私、学生の頃通訳に憧れてたんです。ダブルスクールもしたんですが…」

―あら、そうだったんですね。

「何年も通ったんですけど、結局通訳にはなれませんでした。」

―じゃあ、今は何を?

「自宅で児童英語を教えています。自分の子どもも小さいのでなるべく一緒にいたいですし。」

―ああ、それはいいですね。

「でも…ずっとこのままでいいとも思っていないんです。」

―通訳を諦めきれていないのでしょう?

「ええ」

もしかして、通訳レッスンはこんな感じだったのでは?

教室で先生が録音を少しずつ再生、そのたびに一人ずつあてられて訳す、…なんだか上手くないな、と思いながら訳を言う。先生がちょっと直す。おおっ、よくなったと思う。でもどうしたら先生がいなくても先生のような訳ができるようになるのかなかなか見えてこない。で、自分は日本語力がないのだろうと諦めた。 

やっぱり。

フューシャの花。ウェールズにて。

訳の添削も決して無駄じゃない。でも、結果を操作して結果を改善するのは大変。もっと自然な方法がある。準備、仕込みを調えておのずとよい結果を得るという方法。言ってみれば当たり前だけど。

え?準備、仕込みが十分かどうかわからない…?

では、おたずねします。英語、日本語、それぞれで宴会芸として5分以上語れる演目はありますか?

5分以上しゃべる、じゃありません。古典的演目を一字一句たがわず語るのです。

例えば「外郎売の口上」(歌舞伎十八番より)、「祇園精舎」「那須与一」(平家物語)くらいのまとまりがあるものです。小倉百人一首はひとつひとつが短いので除外。「知らざあ言ってきかせやしょう」は小手試しにはいいけれど、短い。

英語ならParadise Lost (John Milton)出だしの26行にわたるInvocationや短くてもWordsworthDaffodils。それからLincolnThe Gettysburg Address 

え、そんなレパートリーない?じゃあ英語話すとき頭の中で英作文することはありませんか? 

ある?…やっぱり。その状態では苦しいです。早く演目を体得、暗誦してください。

このくらいの分量になるとアタマの黒板に文字を思い浮かべている場合じゃなくなるんです。カラダから言葉が勝手に沸き上がるような感覚に変わる。まるで飛行機が雲の上に出るように。 

雲の上に出るのは自力で!ドーヴァー海峡を西へ。

そのためには自分の時間で繰り返し練習すること。私が代わりになることはできません。ずっとそばにいてやいのやいの言うわけにもいきません。自分でやってください。きっとできます。100回やるまで「できない」と言わないで。100回やってできなかったら1000回やればいい。自分でやることなのでお金もかかりません。それで次元が変わる。こんな面白いことあるかしら。

訳文添削が生きるのはこのあとです。 

通訳は神ワザでもなんでもありません。理に適った方法で学べる人間らしい技です。何よりひとの話をじっくり聴くのが楽しみになります。第一歩はまとまりのある演目を体得すること。あなたのお気に入りを聞かせていただくのを楽しみにしています♪

 

 

「守破離」をBBCでアクラム・カーンに聴く―学び始めたら自由より大事なこと

外国語でも、楽器でも、学び始めるとカメの歩みがもどかしくなるときがあります。毎日の少しずつの積み重ねなんて古い精神論じゃないか…って。

「意識が変われば…」「…を3時間でマスター」

そんなフレーズをきくと、今の自分のやり方がいかにも要領悪く、効率悪い気がしてくるものです。

大丈夫。そんなことありません。

意識を調えたり、全体を短時間で俯瞰したりするのは積み重ねに先立つ準備。あくまでも準備。積み重ねの代替ではありません。大げさな言葉に騙されないで。焦ることはありません。

きっとあなたがすでに習慣にしていることのなかにとてもよいことがあるはず。それを少しずつ育ててね…といいたいけれど、べらぼうに増やし、続けることです。

って、自分の楽器修行を励ましている気がしてきました…。

アクラム・カーンさんは振付師。テロの犠牲者を悼むAbide with Meという作品でロンドン・オリンピック開会式を沸かせました。

いいこと言ってくれるじゃない。この眼差しと意外な声の組み合わせがたまりませぬ♬

アクラム・カーンさん、BBC HARD Talkにて。
画像をクリックすると別窓でビデオ視聴できます。カーンさんの言葉、英日両方で書いておきました。ビデオと並べてご覧ください。

何て美しい方♡

I think, in any form, if you really want to
have a profound impact on it
you have to become obsessed by it.
And I do believe in deep down
at whatever technique it is,
it has to imprison you.
…You have to learn it so much
You have to learn about it so much
You have to do it so much
that eventually in that imprisonment…
you find freedom out of that imprisonment.
You find freedom out of that form
that you’ve been trying to perfect.
Yeah, pain, of course.
Everything is a pain.
Everything is a hard work.
If you want to be good at anything,
you have to work hard,
you have to sacrifice.
If you feel it a sacrifice,
that’s already a problem
If you consider to…for you to be what you are
you have to put in many many hours of work.
you have to do it.
you have to go through it.
思うんですが、どんな表現形式でも
本気で深いインパクトを与えたいと思ったら
取り憑かれたように夢中にならないとね。
本当に思うんですが、どんな技芸であれ
その深いところで
自分を囚われの身にしないと。
べらぼうに習い
べらぼうに知り
べらぼうにやるからこそ、やがて
その囚われのうちに…
自由になるんですよ、その囚われから。
自由になるんです、その表現形式から。
完成させようと努めてきたその形式から。
ええ、辛いですよ、もちろん。
何事も辛い。
何事も取り組めば大変。
何であれ上手くなりたかったら
しっかり取り組まねば。
犠牲を払わなくては。
それを犠牲と感じる時点で
もう問題ですけどね。
その道でそれなりになりたかったら
長い長い時間をかけて取り組まねば。
やらなくては。
やり抜かなくては。

 

 

 

英文科卒が英語関係の就職にこだわるより大事なこと

「英文科卒業するので、TOEICもっとがんばって、やっぱり英語関係の仕事かな、と思うんですけど」

何年か前のこと。なんとなく就職の話になった3年生のRさん。にこにこしているけどどこか無理している感じ。ふと眼差しが陰りました。

―それ、あなたの心の声?
「やっぱり英文科だし。」
―あなたの声か、誰かを気にしてるのか訊いてるの。
「え…」
―お家のかた?
「あ…」
―そう期待されてるの?
「いえ、そんなことはないです。でも私立に通わせてもらって英文科出るのに英語を活かした仕事じゃないと、学費が無駄になっちゃうというか、恩返しできないというか…申し訳なくて。」
―そう言われたわけじゃないんでしょ。
「はい。」
―お家の方はあなたがそう思っていることをご存知?
「いいえ、たぶん知りません。」

おいおい。

 

私があなたのお母さんだったら何を願うかな?
仕事の世界ではあなたはまだ赤ちゃん。でもどんどん自分の手を離れていく…。 

幸せでいてくれますように。

つまり…
夜はぐっすり眠れますように。
ごはんをおいしく食べられますように。
ご一緒させていただく方々とお互いを大切にできますように。

私という避難所を覚えていてくれますように。

他に何がある? 

確かにお母さん世代は時代遅れなこと、細かいことも言うかも。大企業がいいとか、給料はいくらとか、保険や年金とか(病気になるために生きてるのかね)。そりゃそうだ、心配だもの。 でもそれは表面的なこと。

心の奥ではあなたの幸せを一番に願っているはず。

そうでなけりゃそれはそのとき(!)。本気で愚痴りにいらっしゃい。

英文科どうのこうのは大したことじゃない。過去の足し算で今の自分を縛らないで。それじゃ未来がいびつになる。 

まあ、ほんとに社内通訳・翻訳レベルのスペシャリストとして就職したくてしょうがないなら話は別。まだまだインプットが圧倒的に足りないし、あなたは余力がある。TOEICの針なんか振り切って。

じゃ、その折は虎の穴で。

 

そのアクティブラーニング、大丈夫?

久しぶりに再会した母校の先生は不気味なほど30年前とお変わりなく。なぜかこちらばかり大変貌。

「最近あちこちでアクティブラーニングっていうけどねえ。あなたたちほっといたって勝手にアクティブで少しは大人しくしてもらいたかったわよ。」

え、先生、そりゃ無理ですよ。まあだいたい日本の学校教育トレンドは私たちの30年遅れですから、構わずいきましょう。おっしゃるとおりラーニングはそもそもアクティブ。アクティブラーニングに驚いているのは日中韓くらいらしいです。

そういえばこんなことがありました。こないだ研究授業に招かれた学校、授業の前半はひたすら講義だったんですけど、突然「アクティブラーニングやります」と号令がかかって、生徒たちがグループを作ってワイワイやりだしたんです。でも何か違うんです。ワイワイやっているけれど寝てたところを起こされてやらされているみたいで。

そこでアクティブっていっても内的、外的にわけて考えたらどうかと思ったんです。

①の内外パッシブの極端な例はつまらない講義きいて居眠りしている状態。
②の内パッシブ 外アクティブはワイワイやっているけど形だけ。
たぶんあの授業では①から②に移動したんでしょう。

成果を上げているアクティブは③の内外ともにアクティブですよね。

でもこのごろ④の内アクティブ 外パッシブが過小評価されていると思うんです。

そういえば、覚えています。
中1の理科1時間目。オパーリン博士とコアセルベートを語る先生の熱さ。で、宿題はなんとそのストーリーを漫画に描いてくる!
ピューリタン革命を4か月にわたって熱く語る世界史の先生。私の頭のなかは17世紀イングランドの大河ドラマでした。時代考証はめちゃくちゃでしたけど。もうずっとピューリタン革命語っててください、と思いました。フランス革命は自分で調べるからいいです、って。

先生がた、本気のストーリーテラーでしたね!(大人しくない!!)熱くて面白い語りで聴くことを鍛えられました。

学びは内的にいつもアクティブ。ただし外的にはアクティブとパッシブを行き来する。この動きが大事なんでしょうね。生きているものは動く。

これ、ダイナミックラーニングと呼びたいんですけどね。先生、どうでしょう?

 

映画「今を生きる」とエイブラハムと…

「先生、これが私の学生生活最後の授業なんです。」

え、責任重大だ。だけどよかった。今日ははなむけにある映画のシーンを用意してきたから。「Dead Poets Society」(邦題:今を生きる)から、iPad air のCMにもなったところ。

そういえば、初めて見たのはこんなふうに大学の先生のおすすめで…28年前!…一世代巡ったのね。今でも見るたびに「私もキーティング先生であろう」と思う。まだまだなのだけど。(ちなみにJohn Keatingという名はJohn Keatsの現在進行形のような気がします)

(以下、著作権侵害の意図はありません。みなさんぜひちゃんと借りるか、買うかしてくださいまし。)

 

 

We don’t read and write poetry
because it’s cute.
We read and write poetry
because we are members of the human race.
And the human race is filled with passion.
Medicine, law, business, engineering,…
These are noble pursuits
and necessary to sustain life.
But poetry, beauty, romance, love…
these are what we stay alive for.
To quote from Whitman;
“O me! O life! of the questions of these recurring,
Of the endless trains of the faithless,
of cities fill’d with the foolish, …
What good amid these,
O me, O life?Answer;
That you are here –
that life exists and identity,
That the powerful play goes on,
and you may contribute a verse.”
“That the powerful play goes on,
and you may contribute a verse.”
What will your verse be?
僕らが詩を読み書くのは
なにもステキだからってわけじゃない
僕らが詩を読み、書くのは
人類の一員だからだ。
そして人類は情熱に満ちている。
医療、法律、ビジネス、エンジニアリング
これらは尊い探究の道で、
命を支えるのに不可欠だ。
しかし詩、美、ロマンス、愛…
これらゆえに僕らは生きている。
ホイットマンを引用しよう
「おおこの私、命よ 問いはこのように繰り返し…
きりもなく列なす信心なき者たち
都会を満たす愚か者ども
なんの意味がこんなものにあるか、
おお、この私、命よ答え
君がここにいるということ ―
生命が、アイデンティティが存在するということ
力あふれる劇は続く。
そして君も一篇のうたを寄せることができる。」
力あふれる劇は続く。
そして君も一篇のうたを寄せることができる。
君はどんなうたを寄せるのか。

で、届いたばかりのジェイ・エイブラハムの「限界はあなたの頭の中にしかない」を行きの電車の中で読んでたら…この映画と響き合うこと。もう驚いた。電車乗り過ごしそうになった。この本にもキーティング先生、ホイットマンの言う「verse うた」があふれている。(キーティング先生はビジネスをnoble pursuitとしているけれど)

この本はお世話になっている方のおすすめで手に取ったもの。翻訳者の島藤真澄さんの取り組みもすごい。エイブラハムの理念をアジアに伝えている島藤さん。東日本大震災を味わった日本の若者を励ましてほしいとエイブラハムに直談判したそう。訳語も丁寧に本人に確認するなど本気の共同作業のエピソードも。売らんかなっぽいビジネス洋書をその辺のビジネスがわからない翻訳作業者に放り投げたものとは次元が違います。ちょっと良しとされる変化の方向がアメリカ的過ぎる気もするのだけれど、それは脇に置いておきます。少々ご紹介。一読おすすめします。

人から興味を持たれたいのなら、まず、人に興味を持ちなさい。
あなたが人から感動されたいのなら、まず相手に感動しなさい。

口先だけの「凄いですね」という言葉では、まったく伝わりません。人に感動を与えたいのなら、相手に生きた質問をする必要があります。お互いの接点について深く理解をすることです。
そういった人との交流から、あなたの価値は作られるのです。
あなたの独自性、才能とは「相手が認めた価値」である、ということを忘れてはなりません。
(62ページ)

時間を売って、しぶしぶ最低限の、クビにならない程度の価値しか想像できない仕事のやり方では、あなたの手元にお金が残ることはないでしょう。あなたは仕事を通して、あなたの職場や、お客様や、あなたと接する人に何かしら価値を届けることで、少しずつ豊かになっていきます。より良い価値を創出することに焦点をあててください。それはすばらしい笑顔で接客することかもしれません。見えない場所もきちんと掃除をし、場の空気まできれいにすることかもしれません。
(85ページ)

では、最後に質問をひとつ。

What will your verse FOR OTHERS be?

さて、こちらの学びは年中無休。

 

 

コロケーション辞書、使ってますか?―「池上彰の新聞ななめ読み」をヒントに②

「コロケーション辞典をひきなさい」
「語源で考えなさい」

耳にタコができるほど英語の先生に言われたでしょう?え、そんなことない?じゃあ、通訳を教えている冠木先生が呼んでいると言っておいて。別に怖がることはありません。

コロケーション(con/l共にlocation位置する)とは相性のよい言葉の組み合わせ定番のこと。耳にタコができる、と言うけれど耳にイカができる、にはびっくりしますよね。わざとでなければこんなことは言いません。

どの言語でも優れたライティングには語源とコロケーションが大切。まあ、メイクや服のコーディネートのようなものです。このごろはコロケーション、語源が入っている電子辞書もずいぶん出回っています。「メニュー」ボタンで調べてみて。なかったらありがたくオクスフォード大学の無料オンライン辞書を拝借しましょう。

コロケーション辞書

語源辞書

さて、トランプさんは毎日言いたい放題なので、就任演説などはとうの昔のような気がしますが…池上さんはrestore its promiseを「約束を復活」とした日経、読売を「直訳」、毎日の「約束を守る」が自然だとしています。

私はこれには賛成できません。単語を置き換えただけのような日本語の訳文をながめ、ああでもないこうでもないといじってもそれは日本語の作文の練習。最後にはこなれた日本語になって当たり前。でももとの英文を離れてはもう訳ではない。「悪い」こなれです。

restorere(-し戻す)store(修理する)の意。レストランrestaurant体力修復所と兄弟の語源です。一度は壊れた、腹ペコになったことが伺えます。 

約束を「守る」ではこの「一度台無しになった」感が台無しです。

promisepro(前に)mise(遣わす)。相手の「前に」「月末に10万円返します」と書いて差し出すイメージです。 

さてpromiserestoreの組み合わせ、ちょっと珍しいのでは? 

promiseと動詞の組み合わせでコロケーション辞典をひくとgive, make, hold out, fulfill, honour, keep, break, go back on extract…などが出てきます。やはりrestoreとの組み合わせは定番ではないのです。

トランプさんがどれだけ意識的にコロケーションに挑戦しているかは存じません。ただ、翻訳者が非定番を定番に移して「自然でしょう?」なんていうのは自己満足。さて、どうしたら…?

たとえばこんなのは?

「約束を結びなおす」

「約束を再び結ぶ」

「展望を取り戻す」

 

「結ぶ」で日本語らしさを確保、「なおす、再び」でrestoreのニュアンスを活かしています。もっと飛躍できる気もするのだけれどね。

3つめの「展望」に驚いた?イヒヒ!もちろんわけがあるんですよ。

通訳、翻訳の楽しみは、橋かけは無理と思われた川岸に、橋脚を立てるポイントを探し出すこと、橋をかけること。コロケーション、語源は強力な味方です。