誤訳警察」カテゴリーアーカイブ

著者の頭の中の風景が蘇る翻訳のコツ

―さて、こないだの翻訳、これが気に入らなかったのでしょ?

This textbook of internal medicine is aimed at colleagues, medical students and other therapeutic professionals, who, like the author himself, are looking for a healing art with an understanding of man’s body, soul and mind. Presently medical practice is dominated by a pathophysiologically oriented understanding of disease, in which the essence of sick people is not captured.

この内科学のテキストは著者と同じように人間の身体、心、精神の理解を伴う治癒のわざを探している同僚、医学生、諸療法のプロをねらっている。今日の医療実践は、病むひとびとの本質は捉えられていない、病態生理学寄りの疾病理解に支配されている。

一見よくある訳文だけれど…。イメージの順番を不必要に入れ替えていたから、話の順序が変わって頭がこんがらがった。で、どうなった?

日々の積み重ねのみが身につく。

この内科学テキストの対象は、同僚、医学生、療法士、なかでも著者と同じように人間の身体、心、精神の理解を伴う治癒のわざを探し求める方々である。今日の医療実践で優勢なのは病態生理学寄りの疾病理解であり、病む人々の存在の本質は捉えられていない。

―あら、ずいぶん順番入れ替えが減ったのね。気になるところはある?

「療法士、なかでも…のところが、関係詞が限定用法ぽくなってしまって…」

―なかでも、をダッシュにするのも、最近はOKみたい。編集者さんと相談した方がいいと思うけれど。

―書き換えて気づいたことは?

「1文目の終わりにan understanding of man’s body, soul and mindが来ていて、次の文のpathophysiollogically oriented understanding of diseaseとコントラストになっている感じがしました。presentlyの前に“ところが”のニュアンスを感じます。著者がこれはまずいんじゃない?と思っている、そんな気持ちを感じました。」

―そう。人が何かを表現するとき、心が動いていないことなんてめったにない。文章の用向きによってはそれをあからさまに安易に表現するのがはばかられる場合もある。そういうときは文体、レトリック、語順の構造にしのばせる。そして自分の頭の中にある風景がちゃんと蘇るように仕込む。このたった2文で著者が一番気にしているのはなんのことだと思う?

「2文の最後の『患者さんの存在そのものの本質が置いてきぼりになっている』でしょうか」

―私もそう思う。たった2文だから大したことないようだけれど、これが1200ページ積もったらどうなるか…だいぶ読みやすさに差がつくでしょう?

気をつけることはシンプルです。まず構造の通りに読む。返り読み英文和訳で内容を確かめるという人もいるけれど、必ずもとの構造に戻ること。

ご参考までにもとのドイツ語を。構造的には英語といっしょ。もう英独蘭語なんて群馬、栃木、茨城弁みたいなものです。フランス?あれは青森。日本はミニチュアヨーロッパ。

Dieses Lehrbuh der Inneren Medizin wendet sich an Kolleginnen und Kollegen, an Studierende der Medizin und Interessierte der anderen therapeutischen Berufsgruppen, die -wie der Autor selbst- nach einer Heilkunst mit einem leiblich-seelich-geistigen Menschenverstaendnis suchen. Gegenwaertig dominiert im aerztlichen Alltag ein patholophysiologisch orientiertes Krankheitsverstaendnis, in dem das Wesen des erkrankten Menschen nicht vorkommt.

 

I love you は「私はあなたを愛しています」?―翻訳をめぐる思い込み退治します

「翻訳頼まれたのだけど大変。」

―おや、また何が?

「英語を読むとわかるんだけど、日本語が出てこなくて。」

ーどれどれ。

This textbook of internal medicine is aimed at colleagues, medical students and other therapeutic professionals, who, like the author himself, are looking for a healing art with an understanding of man’s body, soul and mind. Presently medical practice is dominated by a pathophysiologically oriented understanding of disease, in which the essence of sick people is not captured.

この内科学のテキストは著者と同じように人間の身体、心、精神の理解を伴う治癒のわざを探している同僚、医学生、諸療法のプロをねらっている。今日の医療実践は、病むひとびとの本質は捉えられていない、病態生理学寄りの疾病理解に支配されている。

ははあ。よくあるタイプの訳文。これで通用しているのもいくらでもあるけどね。訳文は読みにくいもの、と世間もあきらめちゃってるみたいだし。

でもあなたは気に入らないのでしょう。そのセンスは大したもの。きっと心の中でちゃんと音読、イメージ変換をやっているのだと思うよ。それでうまくいかないから気持ち悪い。 

あはは。「ねらっている」「支配されている」は辞書依存。ここは自分で考え直して。

私から今回は1点だけ、でも根本的なことを指摘します。

語順入れ替え訳だと…ニアミス、接触、墜落?

英語と日本語は語順が違う、という19世紀みたいな思い込みから自由になって。

I love youを「私はあなたを愛しています」と訳して「おお、日本語と英語は語順が違う」なんて言ってない?

「私はあなたを愛しています」なんて言いますかね。そんなこという人と付き合いたいですかね。こんなこと言われたら「へえ、そうですか。で、それが何か?」って返したくならない?

英語の主語に「は」「が」をつければ日本語の主語になると思ってない?

だいたい日本語と西洋言語では「主語」「述語」の概念が同じではありまでん。また、主語、述語、という概念がちょっと古い。それに学校で習う英文法は英語にとっても無理であるラテン文法の影響も残っている。

言葉もひとももっと自由。言葉の向こうには人がいる。

これは私の感覚なんだけれど…人はインスピレーションを受けてイメージが湧いた順に口を開く。先に思いついたことを後まわしにして、後から思い浮かんだことを先に言うなんて面倒くさいことをするほどひねくれてはいない。

だから「テーマ→謎かけ→答え」「旧情報→新情報」の順で語られること多い。ためしてガッテンだって「はい、テーマです!」って言ってからクイズでしょ?

 I love youをイメージ順どおりに辿ると、loveの花束をぐっとyouに差し出すしぐさが見える。「おれ好きなんだ、お前が。」でいいじゃない。この「お前が」は「が」がついてますけど、主語ですかね?

語順いじりは最低限で。さもないと紙芝居がめちゃくちゃになります。ABC,CDE,EFGと続いていたお話がACB,CED,EGFとなったら…頭が船酔いします。

ただ、別のお話を勝手に造るのは犯罪です。防犯には英語そのものの構造感覚、文法に基づいて語と語の関係を正確無比に把握すること。

では、がんばりたまえ。

本当はね、通訳と翻訳はひとつのことよ。

 

 

中韓の人名読み方のナゼ?-通訳者の楽しみ

キム・ジョンナム氏を巡ってなんともいえないニュースが続いています。

ところで中国、韓国に関するニュースを見ていて、あれ?と思うことはありませんか。

金正男氏はキンショウナンさんでもキンマサオさんでもなくキムジョンナムさん。でも習近平氏はXi Jimpingシー・ジンピンさんではなくて「しゅうきんぺい」さん。 

韓国・朝鮮の人名は現地読み、中国の人名は放送国日本の音読み。

これは偶然や習慣ではなくて、ちゃんと中国、韓国と「相互主義」にもとづいて取り決めてあるのです。NHKの通訳学校でそう習いました。

相互主義とはお互いに現地読みなら現地読み、放送国読みなら放送国読みにそろえよう、とう方針。

ですから、放送国読みを互いに実践する中国CCTVなら私の名前は「クワンムー・ヨウチーヅー」、現地読みの韓国KBSでは「カブキユキコ」です。

このことはNHKの放送ガイドラインの14ページに明記してあります。通訳に関心のある方は辞書的に参照することをおすすめします。

背景としてはいくつかの事情があるようで…とある韓国の方が自分の名前をメディアで日本読みされたのに不服を申し立てた…在日韓国人の方たちの団体が現地読みの要望を申し入れた…などなど。

中国の人名は、孔子、関羽、劉邦など日本の音読みで長く親しんできたので、いきなりコンツィー、グアンユー、リウバンはカッコいいけど大変。確かに、かえって混乱するでしょう。

さて、通訳者にとって手ごわいのはどちら?

横浜中華街は春節。中国語の音があふれています。

もちろん中国です。習近平氏をShoe Kim Payなんて発音しても「????」。ですから登場人物が加わるたびにアルファベット表記と発音チェックが欠かせません。調べ方は簡単。検索エンジンの翻訳サイトで確認できます。20年前じゃ考えられません。

実はこれが結構楽しいのです。どういうわけか、中国の彩り豊かな音を聴くと、ああ、この漢字は本当はそう発音してほしいのでは、と感じます。漢字の絵姿の迫力が倍加して見えます。漢字圏ならではの楽しみです。

アルファベット圏では孔子をConfuciusなんて書くんだから、だいぶ雰囲気が変わってしまう… 

先日、英語で書かれた本の翻訳で、孔子の引用に珍事発見。英文から訳したうえで「コンフューシャス」と書いてあるのです。辞書を引けば孔子と出ているでしょうに。わざと?たぶん違うね。 

通翻訳者は語学屋さんではありません。学習、検索上手の博覧強記であれ。

ご参考までに

  • 胡錦涛  Hu Jintao
  • 温家宝 Wen Jiaobo
  • 毛沢東 Mao Zedong
  • 周恩来 Zhou en-Lai

いよいよ2期始まります。

 

コロケーション辞書、使ってますか?―「池上彰の新聞ななめ読み」をヒントに②

「コロケーション辞典をひきなさい」
「語源で考えなさい」

耳にタコができるほど英語の先生に言われたでしょう?え、そんなことない?じゃあ、通訳を教えている冠木先生が呼んでいると言っておいて。別に怖がることはありません。

コロケーション(con/l共にlocation位置する)とは相性のよい言葉の組み合わせ定番のこと。耳にタコができる、と言うけれど耳にイカができる、にはびっくりしますよね。わざとでなければこんなことは言いません。

どの言語でも優れたライティングには語源とコロケーションが大切。まあ、メイクや服のコーディネートのようなものです。このごろはコロケーション、語源が入っている電子辞書もずいぶん出回っています。「メニュー」ボタンで調べてみて。なかったらありがたくオクスフォード大学の無料オンライン辞書を拝借しましょう。

コロケーション辞書

語源辞書

さて、トランプさんは毎日言いたい放題なので、就任演説などはとうの昔のような気がしますが…池上さんはrestore its promiseを「約束を復活」とした日経、読売を「直訳」、毎日の「約束を守る」が自然だとしています。

私はこれには賛成できません。単語を置き換えただけのような日本語の訳文をながめ、ああでもないこうでもないといじってもそれは日本語の作文の練習。最後にはこなれた日本語になって当たり前。でももとの英文を離れてはもう訳ではない。「悪い」こなれです。

restorere(-し戻す)store(修理する)の意。レストランrestaurant体力修復所と兄弟の語源です。一度は壊れた、腹ペコになったことが伺えます。 

約束を「守る」ではこの「一度台無しになった」感が台無しです。

promisepro(前に)mise(遣わす)。相手の「前に」「月末に10万円返します」と書いて差し出すイメージです。 

さてpromiserestoreの組み合わせ、ちょっと珍しいのでは? 

promiseと動詞の組み合わせでコロケーション辞典をひくとgive, make, hold out, fulfill, honour, keep, break, go back on extract…などが出てきます。やはりrestoreとの組み合わせは定番ではないのです。

トランプさんがどれだけ意識的にコロケーションに挑戦しているかは存じません。ただ、翻訳者が非定番を定番に移して「自然でしょう?」なんていうのは自己満足。さて、どうしたら…?

たとえばこんなのは?

「約束を結びなおす」

「約束を再び結ぶ」

「展望を取り戻す」

 

「結ぶ」で日本語らしさを確保、「なおす、再び」でrestoreのニュアンスを活かしています。もっと飛躍できる気もするのだけれどね。

3つめの「展望」に驚いた?イヒヒ!もちろんわけがあるんですよ。

通訳、翻訳の楽しみは、橋かけは無理と思われた川岸に、橋脚を立てるポイントを探し出すこと、橋をかけること。コロケーション、語源は強力な味方です。

 

 

 

これじゃ「こなれ」る訳がないー「池上彰の新聞ななめ読み」をヒントに①

みなさん、今日は新聞読みましたか?
朝日では池上彰さんが新聞各社のトランプ大統領就任演説翻訳を比較しています。(朝日新聞 1月28日朝刊)。何回かこれをヒントにしてみます。

「こなれ」ているか「自然」かが池上さんにとってのポイントのよう。読み手の側に立てばごもっともな視点。

でもね、通訳、翻訳を学ぶひとたちの基準としては不十分。

たとえば、レストランでおいしい料理が出てくるのは当たり前でしょ?アマじゃないんだから。プロは素材選びや調理方法、器、インテリアにこだわってお客さんの「おいしい!」の瞬間まで隙なく最善を尽くすでしょ?お客さんは何がどうしておいしいのかわからなくてもいいの。でもシェフが味見して「なんかおいしい」なんて満足してたら、ダメだこりゃ。

順序にも意味がある

池上さんがおっしゃる「こなれていない」≒おいしくない、も原因はいろいろ。素材選び、調理手順…つまづき箇所はさまざまです。

主に採り上げられたのはほぼ出だしのこの部分。
We, the citizens of America, are now joined in a great national effort to rebuild our country and restore its promise for all of our people.

読売新聞の日本語訳は「なんともこなれていない」とご指摘。
―私たち米国市民は今、国を再建し、すべての国民に対する約束を復活させるための偉大で国民的な取り組みに加わっている。―

あらほんと。

どうしてだと思う?

意味のまとまり、イメージごとに番号を振りますよ。
①We, the citizens of America, ②are now joined ③in a great national effort ④to rebuild our country and ⑤restore its promise ⑥for all of our people.

読売では
①私たち米国市民は今、
④国を再建し、
⑥すべての国民に対する
⑤約束を復活させるための
③偉大で国民的な取り組みに
②加わっている。

あれまあ。

フルコースって、前菜→スープ→魚料理→口直しシャーベット→肉料理→デザートでしょ?

それが前菜→口直しシャーベット→デザート→肉料理→魚料理→スープになってしまいました。前半は女子の栄養失調ランチみたいですけどね。

読売訳が「こなれていない」原因は過剰な「番狂わせ」です。

ついでに調べたNHKも似たような感じです。
「私たちアメリカ国民はきょう、アメリカを再建し、国民のための約束を守るための、国家的な努力に加わりました。」
(なぜour countryがアメリカ?citizenもall of our peopleも国民?国家的とはどういう意味?)

どこもこんなレベル?と探してやっと見つけたのは山陽新聞。スタイルを感じます。
「米国の市民はいま、大いなる国家的取り組みに向け協力することになった。国家を再建し、全ての人が希望を取り戻す取り組みだ。」

繰り返しになるけれど、人間はイメージが浮かんだ順に言葉にする。その順序そのものも大事な情報。ひっくり返しは最低限で。そもそも英語と日本語は主語述語の概念が違います。わざわざひっくり返して律儀に「―がーです」なんて骨折り損。

イメージの順を守ると違うお話になってしまう…という人は英語の構造感覚=文法に弱みがあります。おさらいしましょう。

池上さんはrestore its promiseを「約束を守る」と訳した毎日新聞を「こなれています」と評価しておいでです。これには賛成しかねます。ここは私も唸ったところですが。

こなれにも良いこなれ、悪いこなれがあります。

それはまたこの次に。

Keep warm and stay well.

 

プロになれること、なれないこと、私なりの基準

もうずっとずっと前のこと。
大学OBOGのオケがメサイアに挑戦するというので紛れ込みました。

練習ではこう思ったのです…
えええ!指揮はあの大御所先生?!
オケのみんなもすごく上手。
第1ヴァイオリンは音程バッチリ、キレッキレ。
第2ヴァイオリンも深くて確かでいいわあ。
合唱のハーモニーも素晴らしい!
みんなも私もやるじゃん。

そう、こんな感じ!

と・こ・ろ・が…

本番のCDを聴いて奈落の底に落ちました。
全く違っていたのです。(ご紹介しませんが)

いったい何を聴いていたのか…あれは幻聴?

本番はみんなまじめな顔してずっこけドリフのオーケストラ。
よく客席からブーイング飛んでこなかったこと。
ソロを歌ってくださったプロの歌手の方たちには感服するばかり。
どうして噴き出さずにいられたのか…。

あまりに不可測なところでコケるので
眠気予防BGMにはいいけれど、おかしすぎる。

これが生涯アマということ。

技術レベルの問題ではありません。

セルフモニターのタイムラグです。

初心者でもセルフモニターが効いてどんどん伸びることがある。
それが「筋がいい」分野。

残念ながらこの仲間はオケとしてはセルフモニター不足。
「できてない」ことを「自覚できない」。調整が必要なのに気づかない。

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逆に、私は仕事である通訳の録音は想定どおりか、それ以上。

そりゃ「できてる」のは「知っている」。そんなの当たり前で別に気に留めることでもない。

気に留めない?

そう。

いい加減では?

いいえ。

だって「気」は他者メインに使っているから。仕事ってそういうものです。
自分メインに用いるならそれは練習。家でやればいい。

セルフモニターにずれがなく、必要であれば瞬時に調整しているみたい(無責任)。たぶん、あとで確認、ではなく確認イメージを「予想」している。で、予想以上のことを「本番」でやる。

相手に合わせすぎて自分がお留守なんてことは今までありませんでした。

内村鑑三が「真理は意地悪くも楕円である」と言っていたのを思い出しています。楕円の中心点は2つあるのですよね。あんな感じです。他者にも自分にもフルに向き合っているのだけれど、普段の自分意識とは高度が違うような。

みなさんはどんな分野でそんな気分を味わっていますか?

 

1月6日まではクリスマス。商業的でも騒いでもいい、ただ…

みなさん、クリスマスはいかがお過ごしですか?明日から16日あたりまでずっとクリスマスですからね、ここいらでくたびれていてはいけませんよ。

えっ、昨日、今日で散財してしまった?
なるほど初もうでのお賽銭はしょぼいわけだ。

日本では「クリスマスが商業的すぎる!」との批判の声を耳にします。中高生のころの私もそうでした。毎朝讃美歌、説教、祈り、讃美歌からなるきちんとした礼拝で1日を始めていたのですから、骨身に沁みていました…「なんにも知らない人たちはみっともないわね」と思っていた…青かった。

あのねえ、クリスマスに辛気臭い顔しててもしょうがないでしょ!
めでたく騒いでいいんですよ。


だいたい明治のキリシタン禁令解除以降クリスマスが入ってきたころには、欧米のクリスマスはすでによっぽど商業化していました。

昼3時過ぎにはなんだか暗くなるイギリスだって夜までこのとおり。
INPP関係でよく行くチェスターのクリスマスマーケット。まあ、程よい暗さですが。

 

 

そもそもイエスの母子手帳にお誕生日1225日と書いてあるわけではありません。

3世紀、クリスマスをいつにするかは大議論の的でした。520日、418日か19日、525日、12日、1117日、1120日なども候補に挙がっていたのです。

どなたか当たった方は…?あら、うちの親戚3人も当たってる。もとになる暦が違いますが。

1225日なったのはローマ暦の冬至だから、とか春分から9か月でちょうどいい、とか異教の太陽の祭り、とかいろいろな説があります。

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ストックホルム近郊、イエルナの共同体。バイオダイナミック農場の土壌はびろうどのよう。リンゴも来年の土壌に。

決めた理由はいろいろでしょうが、受け入れられた理由は「異教の太陽の祭り」が腑に落ちます。異教というのは何とも上から目線な訳語です。私は人びとの感覚に沿うものになった、と思うことにしています。

北半球の人たちにとって冬至とその次の日の昼の長さの違いは、425日と26日の違いよりありありと感じられたことでしょう。ああまた暖かい春が来る!生き延びられそうだ!という喜びでいっぱいになったことでしょう。

それは理屈でなく、ハラで感じる喜びだったはず。

このハラの感覚が予熱となっているところに、すべてのヘマを何事もなかったかのようにしてくれるというイエスの誕生が重なったら…そりゃ自然にうまくいくでしょう。

さて、身も蓋もないようですが…めでたく騒いで散財した後は2つ気に留めてほしいことがあります。

  1. 1回目のクリスマスの前は「いつまで待てばよいのか知りようもないまま待つしかなかった」時間であったこと。そういう時間は永遠の長さに感じられます。こんな待ち方は最近あまりきかなくなりました。
  2. 光の復活(おとずれ)=命の復活(あらわれ)ではないこと。命の復活=芽吹きにはなお3か月あまりかかります。その間目に見えぬ土壌の中はなかなか忙しいのです。そんなにインスタントじゃないのよ。なにごとも前触れ、本番と二段構え。

こんな話もしているから忙しんだわね。

ご関心おありの方はお気軽にご連絡ください。道場見学はお断りしていますが、おひとりずつお話伺っています。

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NHKで一番通訳泣かせの番組は?

通訳といえば昔はニュースの音声多重放送。たしかにNHKの番組は日英通訳の練習にもってこい。

ここでクイズです。一番通訳者泣かせの番組はどれでしょう?

 

政治…?

ブー

経済…?

ブー

討論番組?

ブー

スポーツ?

ブー

大河?

ブー

ためしてガッテン

んー、ちょっと近づきました。

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答え:鶴瓶の家族に乾杯!

理由は簡単。あまりにも不可測、想定外だからです。

それほど通訳の仕事は準備が大事。「家族に乾杯!」に比べたらほかの番組なんて200%下調べできます。

ところが「鶴瓶の家族に乾杯」で準備できることはわずか。旅する地方の特色、旅人のプロフィールぐらい。あとはどこでどんな人が現れ、故郷の言葉で何を話し、何が起こるかさっぱりわかりません。

例えば、人なつこいおばあちゃんが鶴瓶さんを座敷に通して、郷土名物をふるまいながらおじいちゃんの病気のことを話し出したら…

「ほれ、このいかにんじん食ってみろ。いや~おらほのおんつあ、病院で検査したら血がひとの3ぶんの1しかねえって言わっち。」
「そらおかあさん、心配でっしゃろなあ。」(ここで鶴瓶さんお茶をこぼす)
「あらららら、かんかちしねがったかい?」

いかにんじんって何?squid and carrotのほかにどうしよう!!血が3分の1!そんなはずはありません。おそらく赤血球の数値のこと。そうは思ったうえでさらりとおばあちゃんの言葉どおり訳さないと鶴瓶さんとの話がずれてきます。

で!かんかちって何?

そしてニュース通訳の口調ではあの番組が台無し! 

というわけで、「鶴瓶の家族に乾杯!」は医学会よりよほどハードルが高いんですよ。(えー、例題は福島の皆さんには朝飯前でした。)

福島名物いかにんじん。松前漬けのルーツです。

福島名物いかにんじん。松前漬けのルーツです。

でもさいわい、医学会と違って再放送があります。本放送でうまく訳せなかった表現を仕込みなおし、再放送でリベンジもできますね。そうか、最近はハードディスクに録画できるのでした。

通訳道場のメイン教材に「鶴瓶の家族に乾杯!」を据えるわけにはいきませんが…臨時イベントならいいかしら。

思わぬところに教材は転がっています。あとは料理の腕次第。

通訳道場★横浜CATS オリジナル教材の仕込みも順調です!

 

ロンドン・サヴォイホテルの愛ある鬼の名言集♪

「人はほめて伸ばすっていうけれど違和感…」
「叱るのも苦手だし…」

そんなあなたもこのビデオをご覧になったらスッキリなさるかも。私はスカ~~ッとしました。 

サヴォイといえばロンドンでも屈指の超一流ホテル。これほどのブランドとなるとリニューアルは大きな賭けです。20101010日のリニューアルオープンに向かう日々を収めたのがこのビデオ。サヴォイともなればスタッフの立ち方、歩き方、話し方、ドアの開けたて、アイロンのかけ方にいたるまで「サヴォイの流儀」があります。そしてゲストももちろんすべてにサヴォイ流を期待して来ます。

スタッフ研修をまとめるヘッドバトラーのショーンさんが素晴らしい!とてつもない愛ある鬼なのです。ショーンさんはゲストの期待≧従業員のサーヴィスを決して許さない。どんな小さなことも見逃さない。びしっと指摘し、気づかせる。ほめたりなんかしていない。ただ精確、妥協ナシなのです。

4:57―
「ただやればいいというものではない。流儀には諸々細かいことがつきものだ。朝のお茶の淹れかた、新聞の渡しかた、シャツのアイロンのかけかた、ちょっとしたものの折りたたみかた、お風呂のお湯の張りかた。もし犬の散歩をたのまれたらどうする?いろいろあるんだ。」
I’m not expecting to do just like that because there’s a quite a bit how to serve your morning tea, how to present the newspaper, how to press the shirt how to fold something how to run a bath… what about if somebody asks you take their dog for a walk… there’s a lot.

5:14―
「シャツのアイロンがけは目をつぶってだってできるようになるさ、この研修が終わるころにはね。」
You will be able to iron the shirts and press with your eyes closed by the end of this time.

19:09
「ひとつ言っておいたはずだ。なんだったかね、私が君に向き合ってほしいと言っておいたのは?」
「僕は厚かましい、と」
「そう、その厚かましくて尊大なところが好かんのだ。」
“I mentioned one thing to you. What did I mention that I want you to work on?”
“My cheekiness.”
“Cheekiness and arrogance I didn’t like.”

私は厳しいし、ずけずけ言う。誰彼構わず好かれるわけではない。気にするかって?別に。
I’m quite demanding, I’m quite direct …means not everybody’s taste. Do I care? Not really.

「なんだっていつも遅刻するんだ?自分の葬式か?」
“What’s that thing you are always late for? Your own funeral?”

25:18
「おい!今度しゃべっているところを目撃したら、口をセロテープで閉じてやる。万が一なにか粗相があったら、君はクビ、私もだ。私は自分の評判を君たちゆえに落とすようななつもりは決してないからな。」
Excuse me! If I catch you talking again I will put sellotape on your mouth. if anything goes wrong you might be looking for a job plus me. I have no intention to lose my reputation over any of you.

へっぽこな新人にも手加減ナシの厳しさ。その視線が注がれるのはスタッフ本人の成長やらではなく、さらに先のサヴォイホテル、サヴォイのゲスト。 

いやあ、しびれました。

私の通訳道場もサヴォイ流でまいります。準備、訳語選び、発声、服装までサヴォイレベルです!認定通訳者には前日徹夜しても、電車が遅れても当日は何事もなかったように優雅にやっていただきます。

まあ、つまり私も愛ある鬼でいるってこと。

あなたの中にも愛ある鬼がいるでしょう?その鬼が育てる愛しい誰かがいるでしょう?嫌われる、とか人目が気になるとかどうでもいい。それで離れる人にはさっさと離れていただきましょう。

自分にはそれほどの専門がない?いえ、別に専門なんかひとつもなくてもいいのです。誰もが鬼になれるときがひとつあります。

西洋の小鬼、ガーゴイル。なんだか恐くないですねえ。

西洋の小鬼、ガーゴイル。なんだか恐くないですねえ。

それはあなたの大事な誰かが自分自身を粗末に扱っているとき。「何やってんの!」と本気で鬼になれるでしょ?愛ある鬼は自意識から自由なんですよ。

というわけで、私も別にガミガミ怒っているわけじゃございません。

 

 

英語ができる関係者に通訳を頼んだら…

とある海外講師の2日にわたるセミナーでのできごと。

英語が話せる関係者が通訳を買って出ました。講師は留学時代の恩師とあって大張り切り。料金も12万円と破格です。仲間も「内容がよくわかっているからうまい訳ができるだろう」と期待しました。

通訳の仕事の8割は聴くこと、準備すること。

通訳の仕事の8割は聴くこと、準備すること。

オープニングはいい空気だったのは言うまでもありません…でも…

午後も半ばになると声がかすれて疲れが明らかです。英語ができる参加者は不穏な表情。講師が5つ例を挙げても3つほどしか拾えないのが気になるのです。ふだんから慣れている専門用語は拾えていますが、専門用語の間のつながりがあやふや。自分の経験と考えで埋め合わせているようです。

やがて会場からのコメントに講師も教え子の通訳レベルを察知。通訳に合わせて内容を手加減しはじめました。

アンケートには通訳に関するクレームも複数。

録音からの小冊子作りも、同僚たちが15時間分テープ起こしと訳し直しをすることになりましたが…。出来上がったころには参加者の関心は薄れて…悔いの残るセミナーとなりました。

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海外講師、日本の運営スタッフ、参加者。理想と使命を共にする人々の集いだったはずですが、惜しいことになりました。

通訳できることと英語が話せることは全く別のこと。
通訳スキルは学べること。
言葉の世界の景色が広がる通訳道場★横浜CATS。
第2期残席僅かとなりました。
ご関心おありの方はご遠慮なくお早めにご連絡ください。