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違いはなに?通訳プロ・アマの正確さ、聴きやすさ

「冠木さんはスピーカーの言ったキーワードはきっちり訳してる。でも単語を単語に置き換える通訳者とは別格の聴きやすさ。 何が違うんだろう??」

―たぶん、私しかやっていないのはノンバーバル情報の活かし方。

「それって冠木さんだからできるのでは?」

―いえいえ、そんなことないですよ。個人のセンスだのみじゃありません。写真、音楽…理詰めです。ステップもあります。まあ、練習しなけりゃお話にならないけどね。

ノンバーバル情報の主な要素はひとまず2つ。ひとつは文法。もうひとつは音声。

文法パーツはカメラの設定指示みたいなもの。絞り(ボケぐあい)、レンズの長さ(どのくらい周囲を入れるか)、露出(明るさ、ムード)が読み取れる。

秋明菊が写っているという共通点はあるけれど…絵が違います!

たとえば”My father is working for a bank.”と”My father works for a bank.”
前後の文脈なしでも気配の違いが感じられますか?

東北新幹線下り、仙台到着前の車内放送は”We will shortly be arriving at Sendai.”
in Sendaiだったら気持ち悪い、という感覚がありますか?

このあたり等閑だと同じものが写っていても写り方が違う写真になる。ピンぼけ手ぶれ写真が紙芝居みたいに重なると、間違っていないけれどわかりにくくなる。中高の英文和訳もしくはそれに毛が生えたような単語置き換え通訳によくある失敗。

さて、ふたつめの要素、音声は文字を超える情報を担う。同じ「おはよう」でも人によって、気分によって調子が違うでしょ?そこまで聴いて。ちゃんと聴けば声のメロディは記憶に残る。それを不自然でない程度にこだまする。そうすると声のカノンになる。話し手がモーツアルトなら通訳者もモーツアルト。これなら聴いていて楽。話し手がモーツアルトなのに通訳者がブラームスではおかしい。すべきことをせず勝手なことをしている。

この二人の音楽が8小節ずつ交互に聞こえるなんて…

さて、これら2つの要素も日本語がいまひとつでは台無し。そのことは次稿にて。

講座の質を最後に決めるのは通訳者です。海外講師を迎えたのに「英語ができる身内」に通訳を頼んでいませんか。英語ができるのと通訳できるのは別のことです。頼まれた方も気の毒、せっかくの準備ももったいない。

道場生のインターンとして無料通訳派遣も承ります。ご相談ください。

 

「英語はスペリングと発音が違いすぎます!」そうかな?

「英語ってなんでスペリングと発音が違いすぎます!」

―あー、中高生も必ずそれ言うけれど、あなたもそう思うのね。たとえば?

「こんなの見つけました。 “A rough-coated, dough-faced, thoughtful ploughman strode through the streets of Scarborough; after falling into a slough, he coughed and hiccoughed.” ghの発音、いろいろありすぎです!発音どころかthrouGHなんて黙り込んじゃってお化けです。」

―お化け、いいねえ。イギリスはお化けだらけ。

実はね、みんなが思う以上に実はスペリングの通りに読んでいるんじゃないか、と思ってる。アメリカではCoke “Lite”って普通でしょ?でもイギリスでは眉を顰める人が何人もいてね。アメリカ式が嫌いというわけじゃないの。何となく気持ち悪いんだって。

で、ウェールズの友人とウェールズ語のこと色々話していたときにヒント発見。あ、ウェールズ語はね、一見つづりが奇天烈だけれど古い言語の特徴が残っていて、子音にも母音のやわらかさが残っている言語。で、ウェールズ語の「ありがとう」は”diolch”ディオッホみたいな音。

ウェールズ、スノードニアにて、2011年

私が「あら、Lはどこいっちゃったの?発音しないの?」と尋ねると、友人はなぜか天井をにらんで何度かdiolch, diolch, diolchと繰り返し…「ちゃんと言ってるわよ」と。

耳を澄ますと…あ!言ってる。音にはなっていないけれど息で言っている!声になる前に消えてしまっているけれど、確かに息で言っている。

そう思ってlightを聴いてみると…ghのタイミングで確かに息のかけらが聞こえる!息だけでghをひっかけてるような。liteだと、iのところはべたっと母音のみ。日本人発音によくあるけど、なんだか「らしくない」。

そうやって息に耳をすませてみるとbeautiful だってbūtifulとは違ってる。

そんなこと辞書に書いてない?そりゃ無理もない。あれは発「音」記号なので「息」は書いていない。でも人の声には「音と息」がある。

息なんか聞こえない?

確かにいきなりでは無理。でも慣れれば聞こえてくる。自分でも言えるようになる。自然になる。

同じヴァイオリンの曲を聴いても、弓の返しが聴いてわかるひとと、そうでないひとがいる。ひたすら聴いて、自分でもひたすら弾くと、弓の返しが呼吸のように聞こえてくる。

ひたすら聴き、ひたすら弾けばいい。

あなたの英語も同じこと。自分で夢中になれる題材を選んでやってみたら。

このコの響きを聞いたとき、私だ!と感じました。

ふと気になるのが日本語の音。平安時代から表記と発音はずれていた、と聞いたことがあるけれど、どうやって調べたのかしら。

「たまふ」と「たもう」は口、息のしぐさが違うのでは。(おお、英語でもautumnってある。)

わかりやすさを優先するあまり、もともとあったものがないことにされているのでは…
面倒くさがって昔の音質よくないCDみたいなものを歓迎しているのでは…
それが私たちの言葉への感覚、耳と頭をなまらせているのでは…

お化けと一緒にちょっと心配してる。

 

 

 

 

 

「一度は通訳に憧れたけれど…」諦めるのはまだ早い

「私、学生の頃通訳に憧れてたんです。ダブルスクールもしたんですが…」

―あら、そうだったんですね。

「何年も通ったんですけど、結局通訳にはなれませんでした。」

―じゃあ、今は何を?

「自宅で児童英語を教えています。自分の子どもも小さいのでなるべく一緒にいたいですし。」

―ああ、それはいいですね。

「でも…ずっとこのままでいいとも思っていないんです。」

―通訳を諦めきれていないのでしょう?

「ええ」

もしかして、通訳レッスンはこんな感じだったのでは?

教室で先生が録音を少しずつ再生、そのたびに一人ずつあてられて訳す、…なんだか上手くないな、と思いながら訳を言う。先生がちょっと直す。おおっ、よくなったと思う。でもどうしたら先生がいなくても先生のような訳ができるようになるのかなかなか見えてこない。で、自分は日本語力がないのだろうと諦めた。 

やっぱり。

フューシャの花。ウェールズにて。

訳の添削も決して無駄じゃない。でも、結果を操作して結果を改善するのは大変。もっと自然な方法がある。準備、仕込みを調えておのずとよい結果を得るという方法。言ってみれば当たり前だけど。

え?準備、仕込みが十分かどうかわからない…?

では、おたずねします。英語、日本語、それぞれで宴会芸として5分以上語れる演目はありますか?

5分以上しゃべる、じゃありません。古典的演目を一字一句たがわず語るのです。

例えば「外郎売の口上」(歌舞伎十八番より)、「祇園精舎」「那須与一」(平家物語)くらいのまとまりがあるものです。小倉百人一首はひとつひとつが短いので除外。「知らざあ言ってきかせやしょう」は小手試しにはいいけれど、短い。

英語ならParadise Lost (John Milton)出だしの26行にわたるInvocationや短くてもWordsworthDaffodils。それからLincolnThe Gettysburg Address 

え、そんなレパートリーない?じゃあ英語話すとき頭の中で英作文することはありませんか? 

ある?…やっぱり。その状態では苦しいです。早く演目を体得、暗誦してください。

このくらいの分量になるとアタマの黒板に文字を思い浮かべている場合じゃなくなるんです。カラダから言葉が勝手に沸き上がるような感覚に変わる。まるで飛行機が雲の上に出るように。 

雲の上に出るのは自力で!ドーヴァー海峡を西へ。

そのためには自分の時間で繰り返し練習すること。私が代わりになることはできません。ずっとそばにいてやいのやいの言うわけにもいきません。自分でやってください。きっとできます。100回やるまで「できない」と言わないで。100回やってできなかったら1000回やればいい。自分でやることなのでお金もかかりません。それで次元が変わる。こんな面白いことあるかしら。

訳文添削が生きるのはこのあとです。 

通訳は神ワザでもなんでもありません。理に適った方法で学べる人間らしい技です。何よりひとの話をじっくり聴くのが楽しみになります。第一歩はまとまりのある演目を体得すること。あなたのお気に入りを聞かせていただくのを楽しみにしています♪

 

 

「英語と日本語は語順が違う」を疑うー通訳:トランプ大統領就任演説

なんだか芯から冷えますね。がまんしちゃだめよ、通訳者は鼻や喉を大事にね。

みんながそういうもんだと思い込んでわざわざ面倒にしていることなんて山ほど。でも通訳者を目指すならあと3回「なんで」「ほんと?」って考えてごらん。

たとえば 「英語と日本語では語順が違う」。「I love you」が「私はあなたを愛しています」、語順が違う、文化が違うと聞いたことない?

そんなのBullshit.(牛糞ではありません。牛糞はcow dungです)。

だいたい好きな人に「私はあなたを愛しています」って言わないでしょ。それ標準語書き言葉だし。話し言葉の方がよほど自然。「あたし好きなんだ、太郎くんのこと。」いけるでしょう?

人間はイメージが浮かんだ順に話す。通訳は話し手の頭の中のイメージ紙芝居ボックスを聴き手の頭の中に転送する。なるべく紙芝居の順をこわさずに。この転送に人工的な「現代標準語書き言葉」はあまり向いていません。標準語書き言葉で訳そうとすると主語、述語を気にして語順、イメージひっくり返し始める。しかも英語の主語を訳すとき「は」「が」をくっつける。英語と日本語では主語の概念が違います。「は」「が」つければいいものではありません。

だから標準語で訳すときは一工夫。「イメージの順」「深い呼吸」「骨導音発声」を心がけます。トランプ大統領就任演説、始めの3分ほど同通してみました。音声は動画の下のリンクからお聴きいただけます。

【私の通訳音声はこちら】

(YoutubeのABCの動画に勝手に音声かぶせるわけにはいきません。別ファイルとしましたが、背景にトランプさんの声、聞こえると思います。)

ほんとに便利な時代。通訳練習素材には事欠きません。腕が鳴ります!

ご希望の方には通訳道場お申し込みの前にお目にかかってお話伺っています(もちろん無料)。
お気軽にご連絡ください。

 

私が授業でスラングを重視しない理由

Are you nuts?を「あなたたちは木の実ですか?」なんて訳したらあなたがnuts。これ、「あんた気が変?」のような意味。

「え、こういうの面白いです。もっと知りたいです」

うん、気持ちはわかる。使えるとちょっと楽しいしね。でも授業では優先順位高くする予定はないな。

「下品だからですか?」

西洋の小鬼、ガーゴイル。なんだか恐くないですねえ。

西洋の小鬼、ガーゴイル。なんだか恐くないですねえ。

ううん、そうじゃない。通訳ともなればお上品ぶるより言葉の幅を広く持つことはとても大切。ただ、こういうスラングや若い人の言葉は変化が速い。nutsなんて昔からの言い方だけれど、すぐに古くなってしまうものも沢山。アメリカの日本語学校でアメリカ人の先生が一生懸命「ナウい」なんて教えていたら、噴き出しちゃうでしょ。ネットや映画の方が早いんじゃない?

それにね、そういう言葉はぜひ仲間から吸収してほしい。日本語でもそうだったでしょ。お母さんに「どこでそんな言葉づかい覚えたの!」と叱られたのは何とも楽しい悪ガキ仲間の言葉。そうやって大人をびっくりさせるのも楽しかったでしょ?

「悪い」言葉は蜜の味、仲間のパスワードみたいなもの。先生に習うなんて野暮もいいところ。どうぞ、親ごさんや先生の目の届かないところで仲間からごっそり仕入れてください。

息を呑むほど美しいものでなければ模倣するに足らない

息を呑むほど美しいものでなければ模倣するに足らない

さて、先生は何をするかというと…文化遺産のバトンタッチです。何がどんなに一時流行しようがしまいが、これを知ることは過去と未来への「責任」だ、といえることを優先します。

それを受け取った皆さんがどこへ出しても恥ずかしくない人になりますように。
突然エリザベス女王に出会ってもうろたえずにすむような。
そして、よくぞ異郷のことばを敬意をもって学んでくれた、と感動される人になりますように。

今夜(未明)のトランプ氏就任演説、気になります。アメリカ大統領の演説には受け継がれる、こだまし続けるフレーズがある。トランプさん、tweet(さえずる)しないでbark(吠える)ばっかりしているけど、どうなることやら。

 

英語が話せれば世界が広がると思っている?

「ああ、英語が話せるようになりたい!」

なんでまた?

「だって世界が広がってグローバルに活躍できると思って。」

もう…どこの売り文句に鵜呑みにしてるのよ。

 あのね、英語は話せるだけじゃどうにもなりません。そんなところで止まっていたらイワシの群れのど真ん中。ほら、クジラが大きなお口を開けて近づいてくるよ。

 話せなくていいと言っているのではありません。そこで止まるなと言っているのです。

書けなくてはどうにもなりません。

 例えばアメリカの名門リベラルアーツカレッジはどこもライティングを重視しています。留学生には始めの段階でスピーキングのサポートがあることもあります。でもそのあとは本科学生と一緒にライティング・センターのお世話になるのです。たとえば内村鑑三も学んだアマースト・カレッジ。

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「いや、そこまでは望まないな…。海外旅行のときにもっと楽しめれば…」

 え、今なんとおっしゃいました?

 あなたに仕事で会いにくる海外の方たちは、選ばれて日本との懸け橋となった優秀な方たち。高校時代からライティングを叩き込まれているはずです。そんな人たちに選ばれているあなたにはもっと高望みがふさわしい。

それに海外旅行でちょっとしゃべって楽しい、というレベルなら6か月、8割独学でなんとかなる方法があります。(おお、DL用の小冊子をまだ書いちょらんかった)

さて、書けるようになるには読めること。読めるには聴けること。意外かもしれませんが、耳ができていないと無理して読むことになります。

そこでお勧めなのがAudible.アマゾンが運営するオーディオブック屋さんです。整った文章を耳から入れたら一石二鳥。

2017-01-18

まあ、あなたの人生の次の扉が本当に英語かどうかもう一度考えてみてもいいかもね。

それでもやっぱり英語に挑戦したいなら、今度は半端なこと言わずに頑張ってください。

こりゃもういいや、餅は餅屋、というお方はどうぞこちらへ。。

お手本の英語音声よりこだわって欲しいのは…

留学帰りのもと同級生の英語を聴いておおっ!と思ったことはありませんか。発音が見違えるようにかっこよくなったのに、本人はなんともないような顔。そう、あれはかっこよくなったというより自然になったのです。だから楽。それが耳、カラダのなせるわざ。 

あれれ?日本で日々刻苦勉励したのに…どうも…それはあなたの認知力の問題ではありません。日本にいる限り、物理環境から生理的影響をうけます。それをアタマでカバーしようとする人もいますが、I am much too lazy to do so. Let Nature be your teacher.

ではどうしましょう。 

自分の声を聴くことです。「お客様の声」というように、声はひとの心、ひととなりそのもの。声は身体という楽器を通して響きます。頭と口だけの舌先三寸は「まこと/真言」でない。

着替えることも、人と取り換えることもできない、アイデンティティそのものである声。

人は自分の声がとても気になるのです。

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以前も紹介しましたが、イギリスのコリン・レイン博士は元聾学校の先生。聾のある生徒たちの観察から、通常学級の子どもたちにも通用するシステムを70年代に作り上げました。

そのシステムではお手本をリピートするだけではなく、リピートした自分の声を録音、聴き、気に入るまで聴いて録りなおすのです。相手は機械ですから何度繰り返しても文句を言いません。自分で素敵、と思えたら先にすすみます。終わるころには皆ご機嫌です。そりゃそうでしょう。

これがセルフモニターの力。単独アクティブラーニングです。単独、が大事です。

最近、面白い論文を見つけました。ボローニャ大学心理学部のカンディーニ教授グループが自分の声への認知を研究したものです。

実験はシンプル。同じフレーズを自分の声+親しい人の声or知らない人の声で続けて聞きます。問いを2パターン用意します。「二つとも自分ですか?」「二つとも同じですか?」

後者の方が答えの精度が高いのだそうです。他者の声を、そうとわからないまま「自分かも?」とアタマで考え出すと混乱するのですね。

レイン先生の調査レポート集。

レイン先生の調査レポート集。

レイン先生だったらこの録音を聴いている被験者の唇に注目したことでしょう。人間は自分の声を聴いているときは、おのずと唇がわずかに動くことが多いそうです。カラダはわかっているんですよ。

録音はスマホでもICレコーダーでもできます。語学専用機器で少しずつリピートしては録音、を繰り返すならこちらがおすすめです。エデック社のSDリピーター。とにかく堅牢で、気が散りません。FBなんか見られません。ワンツール、ワンミッションです。

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録音が目的ではありませんから、リアルタイムでセルフモニターできるとなお便利。握りこぶしを口に近づけてマイク代わりにしてもよいでしょう。帽子をかぶってもいいですね。英語子音の高周波をサポートできるツールはなおよいです。

人間は自分が発する声と言葉がとても気になるのです。「間違ってもいいから言ってごらん」なんて不自然で失礼。だいたい、間違っているかどうかなんてわかりません。 

まず憧れるに足るモデルでべらぼうにインプット、そしてべらぼうに模倣を。

大人の外国語学習で大切な2つのこと

外国語は小さい頃から、と思う多くの親御さんがお子さんを英会話教室に通わせます。ところが人生に想定外はつきもの。
「急に中国と取引することになった…。」
「インドネシアに単身赴任することになった…。」
ビジネスと医療の用事は英語が国際標準語とはいえ、心ほぐれるのは地元のことば。だって人は言葉に全身で関わるもの。ふるさとの言葉は骨身に深くしみこんでいます。遠くからやってきた友人が自分のふるさとの言葉を少しでも話してくれると、なんともいえず嬉しいもの。
大人が外国語を身につけるのに大切な2つのポイントをフランスの耳鼻咽喉外科医、アルフレッド・トマティス博士が指摘しています。1つはおなじみの「まずその言語の耳をつくれ」。もう1つが意外にも「文系」的で、言われてみればごもっともで興味深かったのでご紹介します。出典は博士の初めのころの著書「L’oreille et le Langage」(耳と言語)です。
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アルフレッド・トマティス博士。その目には何が映っていたのか…

ちなみにトマティス博士が開発した聴覚発声メソッドは、ノーマン・ドイジ博士の近著The Brain’s Way of Healing「脳はいかに治癒をもたらすか」でも丁寧に紹介されています。
(トマティス博士の著書はほとんど英語、日本語に訳されていません。もともとの情報を知るには日本の関係者を訪ねるか、フランス語で検索するのがコツです。)

まず耳をつくれ

“En tout cas, il n’est pas à douter qu’une langue étrangère voit son intégration se faire par l’oreille. Cette acquisition aidée par le texte et l’image n’en est pas moins essentielle et primordiale. C’est en l’entendant que l’on apprend une langue; et en l’entendant correctement?
Que veut dire entendre ou l’entendant correctement?”
「どんな場合でも、外国語をものにするには耳が決めてであることは疑う余地がない。たとえテキストや画像という補助があるとしても、聴覚での学びが原点だ。言語は聴くこと、それも正しく聴くことを通して身につくのだ。はたして、正しく聴くとはどういうことだろう?」
私たちは胎内にいるときから背骨に響く母親の声を聴き、母語のテンポやビートといった音楽的土台になじみます。生まれてからはその言語がそれぞれの環境にあわせて選び取った音の分布(地域言語ごとの優先周波数帯)に耳をなじませます。これを母語への言語コーディングと言います。
“Cette limitation, qui est presque la règle, ne nous a rendus, maîtres à manier, avec toute la finesse; toute l’agilité désirée, qu’une gamme sonore et rythmique propre à une language.”
「この実際には規則ともいえる限界(訳注=コーディング)があればこそ、音とリズムのモードのパターンを1つだけ然るべき巧みさと速さでマスターすることも可能だ。そのモードは言語ごとに独特だ。」
“Mais quel monde acoustique différent que celui d’une autre langue! C’est un conditionnement tout autre qu’il faut subir. Sans lui; l’intelligibilité nous rend inertes devant toute tentative d’émission articulée que l’on sait ne pas pouvoir contrôler correctement.”
「別の言語の音響世界はどれほど異なっていることか!
新たにまるごとコンディショニングを確立しなくては。
それ抜きになにを外に表現しようと試みてもうまくゆかず、コントロールできていないと思い知ることになる。」
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はじめて外国語を耳にしたときに単語の切れ目がわからないのは、おのずと母語の言語コーディングを通して聴くしか方法がないからです。外国語をコーディングするには何より自然な発話を聴くことです。教材用にわざとらしい録音になっているもの、聴きやすいようにゆっくり読み上げてあるものは避けましょう。自然が一番です。検定外教科書Progress in Englishシリーズを応援してくださった脳神経外科の植村研一先生も3か月以内に100時間聴くことをすすめておられます。そうすれば外国語の回路ができ、日本語と混線しなくなるからです。

そして、ひとりになれ

トマティス博士2つめのアドバイスは「大人は一人になれ」。

英語の授業で先生がお手本のCDを再生する場面をよく目にします。ところがクラス単位のペースでは自分が何をやっているのかどうでもよくなるもの。リスニングもシャドウイングも精度がいまひとつ。しかも人前で口を開くと人目が気になるもの。

耳ができて、今度は口の練習となったらあくまで一人が基本です。ひとりになって、自分と向き合わねばどうにもならないのです。

“Cette technique offre des avantage certains. Le caractère individual du procédé y contribue largement.
Chacun, en effet, dispose de sa machine suivant son bon vouloir, dans une progression répétée; perfectionnée; sans intervention extérieure, sans les oreilles juges du maître. Cette libération est un facteur éminemment favorable à l’éclosion du départ.”
「この手法(訳注=自分ひとりのペースで学ぶ)には確かな利点があり、プロセスの個別化は学びの成功に大いに寄与する。学び手は自分専用の機材を自分の進歩に合わせて使えるので、好き放題繰り返すこともできる。外からの介入や先生の裁きの耳にさらされることもない。進歩するためには始めから自由が極めて大切な要素なのだ。」
“Notre inhibition devant toute langue étrangère s’augmente d’autant plus que la crainte du ridicule…”
「外国語を学ぶ際に『馬鹿にされたくない』とわけもなく恐れると、ますます自分を抑圧するばかりだ。」
“Elle se trouve accrue par le fait que les inhibitions chez lui sont plus grandes; sa position sociale le bloque; sa peur du ridicule le soustrait à ce jeu de construction linguistique. L’habitude qu’il a d’évoquer à tout moment son intelligence pour comprendre ne lui rend aucun service; au contraire, elle intervient sur ce circuit, sur ce rail à créer et, plutôt que de l’aider, elle en entrave l’éclosion.”
「ますます(学びが)脆くなるのは、大人になるほど抑圧が強くなるからだ。社会的地位を気にしたり嘲笑を恐れたりするばかりに言語構築ゲームを楽しむことから自分を引き離している。年がら年じゅう知性を引っ張り出して理解しようという癖もなんの役にも立たない。その逆で、知性はそこに敷設されるべき回路、走路の役に立つどころか邪魔だ。」
ひとりになって、知性のスイッチを切って、ひたすら自分の音に向き合う…人目から隠れて幼子に還るようです。
ぜひお手本の音源とリピートや録音ができる機器を使うのをお勧めします。スマホの録音、録画機能でもいいですね。
ひとりになる?そんな時間ない?だからスクールに通っている?
そりゃいいカモだわね。
トマティス博士の言葉を裏返しにしてちょっと厳しいことを言わせていただきます。「まずよく聴いて耳を作り、次にひとりになって自分の音に向き合う覚悟がなければ外国語習得は難しい。」
イチローだって素振りするのです。
外国語はプロ野球よりよほど敷居が低い。理に適った方向で努力すれば必ず道が開けます。
私は今、どうしても必要なのでフランス語・ドイツ語を独学しています。臨界期?学ばない言い訳に興味はありませんね。私には関係ないと思っていますし、そんなこと言っている場合ではないのでね。
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外国語学習でスタートダッシュする大人の脳の特徴とは

臨界期より神経可塑性

かつて臨界期「仮説」がいつのまにか臨界期「理論」として語られたことがありました。子どもの将来を案じるお父さんお母さんの不安を煽るには恰好のキーワードだったのでしょう。ことに音楽、英語教育界ではうんざりするほどでした。
確かにどの学習にも最適期はあります。窓が全部開いていて、どの窓からでも中に入れるような時期です。この時期はあまり教え方、学び方を工夫しなくても容易に吸収できます。(定着はまた別の問題です!!)
ただ、最適期を過ぎたからといって窓が全部閉まるわけではありません。どこかに必ず開いている窓はあるのです。一度閉まった窓が開いたり、開いていたのが閉まったり…私たちの内なる自然が時に適って最善な窓の開け閉めをしてくれます。これを神経可塑性(neuro plasticity)といいます。プラスティックというと固い感じがしますが、温度を変えても形を変えにくい石や木と比べたら、変わりやすいでしょう?
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大人でも第二言語は学べる、でも個人差はなぜ

ということは…理論的には成人でも外国語の習得は可能です。英語をやり直そうとしている大人には朗報です。けれど、どう見てもあまりに個人差が大きい。無心に模倣を楽しむ無邪気なひと、変身願望の強い演技派のひとはすぐに話せるようになる…でもその背景がもっと客観的に解明されないと、また「臨界期お化け」が復活してしまう。それに大人であればこそ、不当な自己嫌悪に陥るのでは…。
そこで見つけたのがワシントン大学のプラット教授を中心とした研究グループの最新論文。 “Resting-state qEEG predicts rate of second language learning in adults”(Brain&Language、2016)「安静時定量EEGにより成人の第2言語習得速度を予測」とあります。(要約を読みたい方はこちら、Science Directで
“..understanding the nature of individual differences in second language acquisition is critial for both reseach on second language acquisition and also more generally for research o human learning and neural plasticity.”
「第2言語習得における個人差の性質を理解することは、第2言語習得の研究のみならず、より広い意味において人間の学習と神経可塑性の研究にきわめて重要である」「これから見出されることは産学両方に広く応用できるはずだ」ともしています。
さて、これまでの研究事情をさっとおさらいしますと…
第二言語習得に関する研究は音声処理に関するものが目立ちました。しかし音声処理能力の差で第二言語運用力の差を説明することはできませんでした。そこで一般的な認知能力、たとえば潜在学習、手続き学習やワーキングメモリ容量と第二言語習得を関連付けたらどうか、という声が高まったのです。
面白いことに母語とこれらの認知能力との相関関係は認められましたが、第二言語習得との関連はいまだ明らかとはいえません。
なんだかわからないことだらけです…
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ワシントン大学でアメリカの若いもんがフランス語を…

そこでプラット教授たちは、いかにもアメリカンな若者…アメリカ英語しか話せない、中学に入るまで外国語に触れたことがない、学校で習った外国語も忘れてしまった、という面々を16名集めました。そしてフランス語プログラムを8週間にわたって1回30分、16回行ったのです。なんと、進みが速い人はゆっくりな人の倍ほどのスピードでプログラムを終えました。この人たちの安静時の脳波を調べると、顕著な違いがありました。進みの早い人たちは安静時でも右側頭葉に低いβ波が強く出ているというのです。
だからといって「ほらやっぱり右脳だ」とするのは早とちり。
This is not to say that the RH plays a bigger role in L2 learning than does the LH. In fact, a recent reveiw of structural changes assoiated with L2 learning were bilaterally distributed, and that changes in LH density were most frequently associated with L2 (Li, Legault & Litcofsky, 2014)
第二言語を学ぶことで脳にも灰白質が密になるという構造的な変化が生じます。ただし、これは左右両方に生じ、しかも左脳の変化の方が第二言語学習との関連が大きいということです。
じゃあとにかく右脳からβ派を出してやろう!とするのも早とちり。
双子の研究から、脳波のプロファイルは先天的であることもわかっています。

じゃあ、どうすれば

身体にいいらしいと報じられると、納豆が、チョコレートが、エゴマオイルがいっぺんに売り切れ、生産者が振り回される。増産体制を整えるころにはブームもおしまい。あなたはこんなことを自分の脳にやってみたいですか?まさか。
この実験の全体像を再確認します。期間は8週間、全員が同じプログラムを使っています。つまり、その後どれだけ学び続けて、どんな方法を試してどこまで到達したかは不明です。

私は英語を学びなおす大人を思って何度もこの論文を読みました。そしてくみ取ったことはとてもシンプルです。

「第二言語習得(しなおし)のスタートダッシュに現れる差は先天的な性質に因る。この時期に周りと比べて落ち込んだり、やる気をなくしたりしてはもったいない。自分を信じて、開いている窓が見つかるまで歩きなさい。」

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小中学生のことを思うとなおさら、外野はお静かにと願います。